懐中電灯の光に目をしかめる、フクロウの顔。
闇の中を、ふたりの男の影がいく。彼らはまた、森を歩き続けていた。
『おまえ、あのまま俺が助けなかったら、どうしてたんだ? そうとう危なかったな。』
クロオの大きな笑い声が山に響く。
黙りこくった少佐。
『あの坊主は、有名人だ。
あいつの弟子が、たまに会社のサロンに来るから、こんど紹介してやるよ。』。
昼間、クロオは、事故で車がなくなって考えた。
クロオの自分の貿易会社で縁のある、例のサロンのコネクションで、あの禅寺に今夜は泊まろうと。
ところが、拳銃をふりまわして、少佐が台無しにした。
クロオは、トラブルメーカーを、責める苛めるのであった。
少佐が拗ねて怒っていると、懐中電灯を消すクロオ。
真っ暗だが、海のほうが明るい。
水平線にひとすじの陽かりが見え、老師の声が不思議に耳に残っている。
『殺人刀。活人剣。』
だが少佐は、そんな言葉は知らないし、意味もわからない。
彼は、今まさに昇りだした太陽に、心を奪われている。
そして、まぶしさに目を細め、つぶやく。
『That’s sword.』
日の出は、剣のように見え、水平線を示している。幽玄の景観が2人の前に広がり、ひかりの剣が闇を斬り裂いてゆく。
『It’s like a rising sun.』
少佐のひとりごと。クロオがうなずく。
まばゆい光のなか、二人は山をおりてゆく。
完